最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)89号 判決 1949年6月18日
主文
原判決を破毀する。
被告人を懲役一年に處する。
但本判決確定の日から、二年間、右刑の執行を猶豫する。
押收にかゝる現金六、〇〇〇圓及び白麻掛襟二枚、白麻上衣一枚並に人絹白シャツ一枚(證第一號乃至第五號)はいずれも、これを沒收する。
被告人より金一、四〇〇圓を追徴する。
理由
辯護人富川信寿の上告趣意について
原判決を査閲するに、その主文には「被告人を懲役一年に處する。但し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶豫する」とありながらその理由には「(前略)その所定刑期範圍内において、被告人を懲役一年に處し、情状により同法(刑法)第二五條を適用し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶豫し(下略)」とあることがわかる。あきらかに、主文における執行猶豫期間と、理由における右期間とは齟齬するのであって、原判決はこの點において舊刑訴第四一〇條第一九號に該當する違法あり、破毀を免れないのである。
(その他の判決理由は省略する。)
よって、刑訴施行法第二條、舊刑訴第四四七條、第四四八條により、原判決を破毀の上、原審の確定した事実に對し法律を適用するに、被告人の判示第一の所爲は、刑法第一九三條第一項前段に、第二の所爲は同條同項後段に各該當するところ、右は犯意繼續にかゝるから、昭和二二年法律第一二四號附則第四項、刑法第五五條により重い後者の罪の刑に從い、その所定刑期範圍内において、被告人を懲役一年に處し、情状により、同法第二五條を適用し本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶豫するを相當とする。尚、押收物件中現金合計六千圓(證第一、二號)は判示第一の(一)乃至(三)及び(五)の、又白麻掛襟二枚、白麻上衣一枚、人絹白シャツ一枚(證第三號乃至第五號)は判示第二の各犯行によって被告人が收受した賄賂(但し證第四號の白麻上衣一枚は判示第二記載の白麻生地をもって調整したもの)であるから、同法第一九七條ノ四、前段によりこれを沒收し、判示賄賂中右以外の分はいずれも被告人において消費し、沒收することができないから、同條後段に則りその價格に相當する金一、四〇〇圓を被告人から追徴すべきものとし、主文のとおり判決する。
右は全裁判官一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)